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2010年12月15日 (水)

楽吉左衛門さんの還暦記念展茶会「私の好きな光悦茶碗とともに」

楽家当代の吉左衛門さんの講演会を聞きに行ったのは今年の夏でした。

それまであまりにアヴァンギャルドな当代の楽茶碗に???な思いだったのですが、お話を聞いてすっかりファンになってしまったのです。

その時に、楽さんの還暦の記念茶会がある、とお聞きしたのですが、希望者殺到が予想され、まあ、当たるわけないと思いつつ応募してみたのです。

、、、、、そしたら当たったんです〜!!happy02(普段はくじ運悪いんですけど)
(ちなみに、仕事を休むはめになりましたが。)

P1080204

あいにくの雨でしたが、一つ紋付きでいきましたわよ〜。


P1080203

一グループ12名でまずは楽美術館内の小間にて、楽さん自身のお点前による濃茶を。

雨ゆえに、ただでさえほの暗い小間はさらに暗く、床に置かれた燭の灯りだけで、よい雰囲気でした。
お軸は圓鑑国師(春屋宗園)の臘八偈。
(12月8日に悟りを開いたといわれるお釈迦様にちなんで、臘月=12月、八=8日、12月1日〜8日まで禅宗のお寺では臘八接心という修行がおこなわれる)


楽さんは今年60と1歳。
お父上の覚入さんがなくなられた時のお年と同じだとか。
早くに師匠でもある父上をなくされて、色々ご苦労されたと思いますが、その父上の歳を越えることに、格別の思いがおありになるのでしょうね。

主茶碗は楽さんご自身の焼貫、詩銘「一棃雨(いちりう:一鋤で掘り起こしただけ雨が地面にしみている)」
これには蘇東坡の詩がつきます。
久々の雨が南山に降って、荒れ地を耕すと芹が一本、根が生きているのをみつけた。
雪の季節を越えて、いつこの芽は動き出すのだろうか

獄からだされて流人生活をおくる蘇東坡の心境、相通ずるものがあったのでしょうか。

私はこの茶碗の末客でいただくことができました。
まさに織部もびっくり!のゆがみようの茶碗で、どこから飲んだらいいのやら、ちょっととまどいました。
平らなところからだと、こぼしそうだし、角からのむのも一苦労、口作りは厚く、唇が切れそうな荒々しさ。
なかなか当代のこの手の茶碗はむつかしい。

茶入もご自身の焼貫。蓋は形成の後から切り取った共蓋。
これは写真で拝見したことあり。

ゆがみのある茶入なので、仕覆がなかなかむつかしく、友湖の次期当主の方につくってもらったものもあるそうですが、本日は沖縄の織物作家、上原美智子さんの織られた印度ムガ繭金糸布の包み帛紗にて。

この方は蚕がはきだすたった一本の糸(ふつう絹糸は何本かを縒っている)から布を織られた方で、その布は中空になげるとまるで羽毛のようにひらひらおちてくるのだとか。(もう体力的に織れない、そうです。残念ながら)
楽さんはそれに感動されて依頼されたそうです。
物を作る人、というのはどこかで心と心がつながっていくのでしょうね。
(ものつくりの才のない私にはわからない世界があるのでしょう)

お菓子は西陣・塩芳軒さんの上用。
これがまた絶品で、、、、、lovely
中の餡が白餡、、、?かと思ったら口に広がる濃厚な黒蜜の味が、、、、
こんなおいしい上用、食べたことありません。
(またまた京都の和菓子の世界にじ〜〜んと感激するのでありました)

かざらない言葉で話されるお話を、小間という狭い、親密な距離で聞くことができた、というのは貴重な体験でした。


濃茶席の後は、楽さんのお家(江戸時代の建築・国の登録文化財)の中にある六畳+二畳のお茶室、翫土軒で。
奥様のお点前による薄茶席。

P1080206

お軸は当代のお好きな、光悦の手になる日蓮道歌。

終に小乗を以て衆生を済度せず
あしのはのすがたはふねににたれども なにわのひとをえいそわたさね

中風をわずらった晩年の光悦の、少し震えた字が胸にせまります。

蘆の葉=達磨の逸話〜小乗仏教では人を救えない、という大乗仏教を唱えた日蓮の言葉。
楽家は代々日蓮宗だとか。
苦しいときには、楽さんはいつもこれを見ておられる、というお話でした。

それにちなんで床の花は枯蘆。(楽吉左衛門記念館のある滋賀の佐川美術館の館長さんが、琵琶湖畔でとってこられたもの。館長さん、このお席で半東さんされていました)
古唐津の水指も蘆文、浄清の釜も蘆鷺地紋の車軸釜。

なんといっても感激は!
光悦のお茶碗を手にとって拝見できたことです!

美術館ではいつもガラスの向こう、一度手に取ってみたいと思っていたお茶碗の一つをこの手の中にとってみることができました。(これでお茶をいただけたのはお正客さんだけですが)

実はこの光悦、どこの美術館にもまだでたことのない、初公開の茶碗だったのです。
白釉で、同じ光悦の国宝「不二山」に形は似て高台にかけてするどく削り取られ、胴は「乙御前」のようにどこかやわらかい曲線、手の中でぽってり、吸い付くような感じとでもいいましょうか。重さは重くなく、軽くなく。

ああ、こういう茶碗なんだ、、、と体で感じることができてもう感激です。

これには益田鈍翁が入手のときのいきさつを書いた添文がついています。
益田家と楽家の縁戚関係により、今は預かりの状態だとか。
当分一般公開はされないようです。
(このとき、抽選にあたってほんとによかった〜cryingとしみじみ思いました)

銘は当代がおつけになった「冠雪」。
楽さんの光悦大好き、は講演会のときにお聞きしましたものね。


替え茶碗は桃山時代の黒織部、同じく桃山時代の安南の、欠けた部分を9代了入が補ったもの、当代の(アヴァンギャルドでなくて、乙御前みたいな)かわいらしい赤楽、銘「常初花」、婚約の折、当代から奥様に贈られた物。

「これは今でも私のもので、美術館にはお貸ししているだけです。」とおっしゃる奥様。
今でも釉薬をかき混ぜるのは奥様の役目とか。
苦しい時代もいっしょに乗り越えてこられた、というゆるぎない信頼と愛情を感じる言葉でした。


お菓子は聚洸さんの銀杏餅。
甘さをおさえた薄茶の席にふさわしい誂え菓子。

奥様が語られるお話は、楽さんが当代を継がれる決心をされるまでのお話や、亡くなられた先代のお話、次代を担う後継者のお話など、450年も続く長い歴史と、これからも続くであろう未来にわたって、限りない楽家への愛情をひしひしと感じられるものでした。

P1080207

心にしみるよいお話の数々をお聞きして、雨もなんのそのの満ち足りた思いで、楽家をあとにいたしました。
この機会を与えてくれたクジの神様に深く感謝をしながら。


(この調子で、近々茶友と行く予定の佐川美術館・楽吉左衛門記念館の茶室見学も燃えそうです!)

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楽吉左衛門さんの還暦記念展茶会「私の好きな光悦茶碗とともに」を参照しているブログ:

コメント

楽さんが古渓宗陳ではなく、春屋宗園を掛けられた
象徴的です

光悦は茶碗の焼成を専門の職人に依頼していたけど
一番多かったのか楽家らしいので、
関心が深いのは当然でしょう

すばらしい経験をされましたね。
やはり京都暮らしのたまものですね。
しかも、お道具組のすばらしさは目をみはります。
お話だけでも目に浮かぶようですよ。
羨ましい限りです。

はかなきもの様

古渓宗陳ではなく、春屋宗園、、、だったわけはわかりません。
「臘八」がとにかく使いたかったのではないでしょうか。

今日は佐川美術館の楽吉左衛門館を見てきましたが、未だ道の途中、という感じがします。ずっと長生きしていただいて、これからの作風の変化、発展を見てみたいと思いました。

nageire様

宝塚からでも出かけたでしょうが、やはり行き帰り半時もあれば十分というのはありがたいです。もっともっといろんなところへ出かけたくなります。
あと、おいしい上生が手に入りやすいのがうれしくて。happy01

コメントにお答えいただきありがとうございます。

前に一度、包み紙に書かれていた謡曲の一節の
所在についてコメントしたことがありました。

人格の円満だった春屋宗園を選ばれたのだと思いましたが
そうではないらしいとのこと。わかりました。
ありがとうございました。

はかなきもの様

「昭君」の一節ですね。
観世会館へも行かなくては、、、

いえ、楽さんのほんとうの意図はわかりません。
古渓和尚の性格を示すような逸話はありますが、楽さんは古典にも精通した方ですので、そこらも考えておられたかもしれませんが。

はじめまして、のりたまと申します。
12月の記念茶会ははずれましたが、2月に再度行われる記念茶会に参加できることとなりました。
私も講演会のお話等からご当代のファン?になった一人です(笑)
いつも講演会等一緒に行く友人は都合があり今回のお茶会は一人…ちょっとドキドキしております。
そこで、誠に申し訳ございませんが、質問がございます。美術館にお電話して伺おうかともおもいましたが、実際にいらした方のお話は何よりだと思いまして。
・私も当日着物で伺うつもりでおりますが、女性でお洋服の方はいらっしゃいましたでしょうか?(今年は雪が心配で)
・濃茶席のお流儀はいかがでしたでしょうか?臨機応変にとは思っておりますが、事前にお知恵をいただけると慌てずにすむかと思いまして…どうぞよろしくお願い致します。

のりたま様

2月においでになるのですか。それはよかったですね。
楽さんのお茶会は一応作法にのっとっているものの(多分表千家とおみうけしました)お作法をしらなくても楽しめるような雰囲気でしたので、あまり堅苦しく考えられなくてもよいと思います。
女性はやはりお着物の方が多かったですが、私の席ではご招待されたお正客さんはお洋服でした。この方もあまり作法にくわしくはないようでしたが、陶芸関係のお知り合いの方のようで、濃茶席も薄茶席も席主さんとなごやかに会話をされ、とても良い雰囲気でしたよ。
あまり参考にならないかもしれませんが、どうぞしっかり楽しんできてくださいね〜。

しぇるさま

ご回答ありがとうございました。
一昨年のお茶会に友人と伺ったことがありまして、その時もしぇるさまがおっしゃるような和やかなお席でした。
皆さんお茶をやってらっしゃる方だけでなく、楽さんがお好きな方、焼物がお好きな方…様々のようでした。
今回は一人ですし、濃茶もあるのでお隣にご迷惑をかけては…と少し不安になりましてご質問致しました。おかげさまで参考になりしたし、不安も薄れました。
せっかくの機会。今回行けない友人にもレポしないといけないので、しっかり楽しんできます♪
ありがとうございました。

のりたま様

あまりお役立ちになりませんでしたが、きっと有意義で楽しい時間になることうけあいです。一人参加のほうが、お話に集中できて私は好きです。ではでは、Have a good time!

しぇるさま

ありがとうございます。私もどちらかというと一人が好きなのですが、緊張するタチなので…
前回のお茶会で非常に心を打つお話があり、友人との間ではすでに語り種になっております。
前回のお茶会、しぇるさまのお話から今回も和やかなお席だと安堵。
京都は学生時代を過ごした懐かしい場所。でも当時は気付かなかった様々なことが今になって目につくようになりました。

のりたま様

私も、学生のころはなんでこんなことに気付かなかったかな〜と思うことが多々あります。それなりに人生経験をつんだから見えてくることもあるのでしょうね。

しぇるさま

過日はアドバイスありがとうございました。一人でどうなることかと思いましたが、ひどく緊張することもなく素直に楽しめました。やはり素敵で和やかなお席でした。
前回あえなく抽選に漏れ、今回再チャレンジの人を優先してくださったとのこと。そのお気遣いがまた嬉しかったです~
残念ながら楽さんのお点前を頂くことは叶いませんでしたが、またいつか…と期待することにしました(笑)
お茶をやっていなければおそらく縁のなかった機会…これまでも度々やっていてよかったと思いましたが再認識。今回のお茶会で改めて楽さんご夫妻のファンになりました!

のりたま様

とうとう行ってこられたのですね。
アドバイスなどというほどのことは言っておりませんのでもったいないです。
滅多にないチャンスにめぐりあえた幸運に感謝ですね。
今でも時々思い出して、いい席だったなあ、、、と反芻しています。
今後の楽さんにも注目いたしましょう。

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